たった1匹のハエが、勝負の明暗をわけてしまったという出来事がありました。
1865年9月1日、ビリヤードの世界選手権決勝。ルイス・フォックスとジョン・ディアリーは、息もつかせぬほどの緊張したゲームをくり広げていました。ゲームはフォックス優勢のうちにすすみ、優勝はもう彼の目の前にありました。
このとき、1匹のハエがどこからともなく飛んできました。そして玉の位置を確かめていたフォックスの手元にブーンときて、彼の「突き玉」に止まってしまったのです。
フォックスはキュー(玉突き棒)でそれを追い払いましたが、ハエは1度は飛び去るものの、すぐまた玉に止まってしまいます。何度これをくり返してみてもハエはどこかにいってくれません。
このため場内の緊張の糸は切れ、あちこちから笑い声が起きるという始末。
フォックスもそれまでの冷静さを失い、あせるあまりハエの止まった玉を突いてしまったのです。集中力を欠いた玉は思いどおりに転がらず、思わぬミスをしてしまいました。
これによって、フォックスはほぼ手中におさめていた優勝をディアリーにさらわれ、そのうえ失望のあまり自殺してしまったのです。それもこれも、たった1匹の気まぐれなハエが原因でした。
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