昭和56年8月、東京都目黒区でアパート住まいのA子さんの風呂場をひとりの男がのぞき見していました。驚いたA子さんはすぐ110番。かけつけた目黒署員が現場から500メートル離れた路上を歩いていたタクシー運転手のNさんに職務質問。あいまいな答えをするNさんを署まで連行しました。
このNさん、犯行をいったんは否認しましたが、検事調べの段階で犯行を認めて略式起訴され、罰金1万円を仮納付しました。
その後、Nさんの主張は一転。無罪を主張して正式裁判が開かれることになりました。ところが結局は、その裁判でも有罪判決をいい渡され、弁護側が控訴。
裁判は長びき、昭和60年の控訴審判決でようやく逆転無罪を勝ちとりました。その判決理由というのが、
①風呂場の構造上、のぞき見できるのは、身長170センチ以上だが、Nさんは身長が160センチ。
②被告は視力が0.1で、当時はメガネをかけていなかったから、のぞき見は無理だった。
というもの。たしかに、これではのぞきたくてものぞき見は無理。物理的に不可能であることが証明されてしまったわけです。
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