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ペンの力は時に権力をもくつがえす

政府の政策や官吏の行動にたいする批判は、悪意や虚偽にもとづかないかぎり、報道の自由が保障されています。この風潮が確立されたのは、1734年のゼンガー事件であるといわれています。
この事件は、当時イギリスの植民地だったアメリカのニューヨークで、『ウィークリー・ジャーナル』という新聞が、総督府の政治批判をおこなったため、発行者のゼンガーを治安妨害を理由に逮捕しました。
しかし、ゼンガーは、そのニュースソースをあかさず、編集者が責任を負うべきであることを公判で述べました。
この一件で『ウィークリー・ジャーナル』はあわや廃刊、というところまで追いつめられてしまったのです。
ところが、被告ゼンガーの弁護士、アンドルー・ハミルトンは、人間の権利である自由を強調し、真実の報道こそイギリス人の権利だと一世一代の熱弁をふるいました。陪審員たちは彼の姿をみて感動、無罪の判決をくだしたのです。
名誉毀損における刑事裁判で、報道内容が事実にもとづくことを立証することにより、はじめて無罪を確定したこの事件は、アメリカにおける言論出版の自由の歴史上もっとも重要な事件とされています。
「ペンは剣よりも強し」という言葉がありますが、ときとしてペンは権力をもひっくり返すのです。

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