投身自殺の青年が薄れゆく意識の中で掴んだものは

イタリアの自動車会社でセールスマンをしているニノ・トリノ君、仕事はできるし、なかなかの美男子とあって、その会社の社長令嬢に好感をもたれていました。
ニノ君のほうも社長令嬢にぞっこんで、あるとき意をけっしてプロポーズすると、彼女からは「OK」の返事。
ただし、父親である社長は、
「娘の結婚相手は金持ちが絶対条件」
だといいます。
しかし、この条件はニノ君にとっては大問題でした。というのも、ニノ君の唯一の欠点といえるのが、彼の家の貧しさ。
どんなに身を粉にして働いても、金持ちとよばれるまでには生涯を終えているかもしれません……。
身分ちがいの結婚が、遠い夢であることに気づいたニノ君は、令嬢との結婚をあきらめ、人生までもあきらめる決心をしました。
小さな舟を力なく漕いで、ナポリ湾の沖に出ると、水中へと身を投じたのです。
あれ?薄れゆく意識のなかで、なにかが足にからみつく。ロープのようです。いったいなんだろう?
冥途のみやげにこのロープの正体をつきとめようと、一度水面に出て息を深くすいこみ、再度もぐりました。すると、ロープの先にあったのは、なんと金庫ではありませんか!
舟に引きあげて確認すると、日本円なら約1億円という大金がつまっていました。金庫の形から以前の大洪水のとき、銀行から流されたものと判明。
根がまじめな彼は、ちゃんと銀行に届け出ると、「あなたにさしあげましょう」との返事をもらいました。
これで貧乏という、唯一の欠点もなくなったニノ君は、胸を張って令嬢に再プロポーズ。めでたく結婚へとこぎつけたのでした。

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