ドラキュラにしても、フランケンシュタインにしても、狼男にしても、外国の怪奇スターは、日本の幽霊ほど怖くないという日本人が多いです。その理由として、外国の怪奇スターにはみな足があるから、という説があります。なるほど、日本の幽霊は、足元がフワっと消えています。
いかにも魂が空中をさまよっているようで、だからコワい……。
足のない幽霊とは、いかにも日本古来の伝統という感じですが、日本の幽霊から足が消えたのは、江戸時代の後半。1810年代あたりだといわれています。それまでは、絵画に描かれた幽霊にも、能の「船弁慶」に登場する平知盛の幽霊にも、ちゃんと足がありました。
幽霊の足を消したのは、歌舞伎役者の尾上松緑(おのえしょうろく)。彼は『四谷怪談」を演じるにあたって、なにか凄味のある演出はないものかと考えました。そこで思いついたのが、幽霊の足を隠して、人魂といっしょに登場するという手法。幽霊がフワッと現れる感じが、人魂とダブるという寸法です。
これが怖いと大評判になり、以後、日本の幽霊からは足が消えることになりました。
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