わが社ももはやこれまで……という経営の危機におちいったとき、あなただったらどうするでしょうか。まさか、自社の内情を消費者にそのままアピールするなど、ゆめゆめ思わないでしょう。
ところが数十年前のある日、アメリカはピッツバーグ市で、こんな新聞広告が出ました。
「弊店はまさに破産の危機に直面しています。こんな広告をだしたら、債権者からどんな目にあわされるかわかりません。しかし、みなさんが明日、こぞってご来店のうえお買いあげくださったなら、その売上金をもって債権者にも支払いができ、迷惑をかけずにすみます。でなければ私の店は破産するのです。この窮状を打開するために、採算をまったく度外視した、ご覧の破格値でお買いあげください」
広告主は、文面どおり破産一歩手前の洋服店の主人。
この追いつめられた店主が相談にいったのは、アメリカ広告界黎明期の大長老といわれたJ・E・バウアースのところでした。
バウアースは店主から話を聞き、ありのままを新聞広告にだしてしまったというワケです。
ところで効果のほどは……。この正直すぎる広告にいたく驚き安値を期待した人びとが店に殺到して、押すな押すなの大騒ぎとなりました。
こうして、抱えていた在庫は一掃され、つぶれるはずだった洋服店は、破産するどころかすっかり立ちなおってしまったのでした。正直者は得をする、という大逆転のお話でした。
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