江戸前寿司には約200年の歴史がありますが、イクラがネタに使われはじめてからは、まだ70年もたっていません。江戸前寿司の誕生期から昭和初期まで、ネタは魚貝の刺し身に限られ、いわゆる珍味系のネタは存在しませんでした。
ところが、昭和16年のこと、銀座の高級寿司店「久兵衛」で、常連客の1人が主人の今田寿治さんに向かって、「もっと珍しい寿司を食べたいな。たとえば、イクラの寿司とか、うまそうだよなぁ」と話しかけたといいます。その言葉をヒントにして、今田さんは「しかし、イクラを酢飯の上にのせても、こぼれるなぁ」と考えました。そして、酢飯を海苔で囲む「軍艦巻き」のアイデアを思いついたそうです。
次に、その客が訪れたとき、今田さんが新考案のイクラ寿司を出すと、これが予想以上に受けて、イクラは店の定番メニューのひとつになりました。
現在では、いろいろなネタが軍艦巻きにされていますが、その元祖はイクラなのです。
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