「首のない死体」というのは、エラリー・クイーンの『エジプト十字架の謎』をはじめ、推理小説によくでてくるトリックのひとつです。
たいてい、被害者と思われていた人が、じつは生きていて犯人だった、というオチとなります。たしかに、身体の特徴などは、よほど親しい人でないと知らないので、その死体がだれのものかを知るには、首から上がないと困難なのです。
殺人事件とは関係ありませんが、画家のゴヤの場合も、死後60年たったところで、その遺体が本当にゴヤのものかどうかという問題が発生しました。
スペイン人だったゴヤが亡くなったのは、フランスに旅していたときで、1828年、ゴヤは82歳でした。遺体はボルドーに葬られたのですが、それはゴヤの友人のゴイコエチュアの墓のすぐ近くでした。
その後、故国スペインに遺体が移されることになり、1888年に墓が開かれました。ところが、遺骨はみるもむざんにメチャクチャにされていました。よく調べてみると、隣のゴイコエチュアのものと混ざっている様子。
しかし、どんなにつなぎ合わせようとしても、ふたつあるはずの頭蓋骨がひとつしかありません。
さて、盗まれたのは、どっちの首か。当然、有名人であるゴヤのものだろう、と考えられるのですが、ゴヤの頭蓋骨をもっているという人物は名のりでることなく、今日まで、ゴヤの遺体は首のないままなのです。
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