運命とはほんとうに皮肉なものです。
ある日、フランス国王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットは、パリのルイ大王学院を訪問しました。学院では、学生から選ばれた代表が、ラテン語で詩を朗読し、ルイ16世の戴冠のお祝いと歓迎の意を表しました。
このとき、選ばれたのがロベスピエールという成績優秀な17歳の学生でした。
少年は降ってくる雨を気にもせず、健気にも国王への尊敬をこめて、一生懸命詩をよみあげたといいます。国王のほうはというと、美々しく着飾った姿で、馬車に乗ったまま、ただ儀礼的に詩を聞いていました。
それから17年……。フランスは大革命のまっただなかでした。ルイ16世は国家の敵として、裁判を受けることになりました。そして、その王にたいして死刑要求をしたのが革命の指導者、ロベスピエールだったのです。
そう、国王の前で詩を朗読したあの少年です。このとき、ロベスピエールは国民のヒーローとなり、国王は死刑を宣告されました。国民のヒーローとなったロベスピエールと死刑を宣告された国王。ふたりの立場は大きく逆転していたのです。
ルイ16世を死刑に処したロベスピエールは、もしかしたら17年前の「あの雨の日」のことを思いだしていたかもしれません。
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