「おいしい店」は、路地裏に多くあります。なぜなら路地裏の店は、フラリと入ってくる客が期待できない分、「たまたま」ではなく、「わざわざ」来てもらう店にしなければならないからです。
実際、路地の奥のそのまた奥、とても気づいてもらえないような場所にあるのに、すべてにわたって行き届き、いい客筋で賑わっているという店は少なくありません。そうした店には清廉な品格というべきものが漂っています。ハンディがある分、地道な努力を積み重ねていい店に育て上げていく。そんな心意気と志が路地裏の名店を生むのです。
ちなみに、こうした路地裏の名店は、かたまって存在することが多いというのも事実。店も人間と同じ、近くの料理人どうしが切蹉琢磨していくうちに、その地域全体の店がいい店に育っていったり、同じ地域の飲食店が、「我が街のステイタスを高めよう」と無言のうちに一致団結したりということもあるでしょう。そうした刺激や意気込みが大きな活力となって、界隈がさらに活気を増すようになっていきます。
しばしば雑誌で見かける「最近元気な注目エリア」といった特集には、流行りに乗じただけのイマイチな店も混在していますが、いい店を開拓できる可能性も高いのです。
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