電電公社が民営化してNTT(日本電信電話会社)となったのは昭和60年4月1日でした。初代社長の座についたのは電電公社の総裁だった真藤恒(しんとうひさし)ですが、そのイスをめぐって、民営化前から激しい争いがくり広げられていました。
電電公社の総裁といえば民間会社の社長にあたります。その電電公社最後の総裁であった真藤は民営化されたあとのNTTでも、トップである社長の座をねらっていましたが、社内外の大方の予想では、当時、副総裁だった北原安定氏のほうが有力だと思われていました。
というのも、北原氏は政界、とくに田中角栄らが強力にあと押ししていたからです。
ところが、田中角栄が病気で倒れ形勢逆転、真藤氏が初代社長に就任、北原氏は無念の涙をのんだのです。
だが、人生とは皮肉なもの。平成元年3月6日、真藤氏はリクルート事件で収賄の罪に問われ逮捕されてしまいました。そして、その翌日。かつてのライバルだった北原氏(このときNTT顧問)は電気通信事業に貢献したとして前島密賞を受賞したのです。お縄を頂戴した真藤氏と、名誉な賞を受賞した北原氏。その好対照ぶりは、まさに人生のおもしろおかしさをあらわしているといえるでしょう。
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