その昔、足尾銅山のあった栃木県足尾町に、赤茶けた大地の広がる一帯があります。その土壌は強い酸性で、一本の草木も生えていません。
じつは、この光景こそが、酸性雨が降ったあとなのです。
足尾鉱毒事件で知られるこの町には、1883(明治13)年から70年間、銅の精製による亜硫酸ガスが吹きつけました。このガスを含んだ雨は、強い酸性を示します。そして、その酸性雨があたりの環境を破壊。いまだに、その土地には草も生えないのです。
日本では、最近になって、酸性雨が注目されていますが、すでに100年以上前から酸性雨は降っていたのです。さらに20年ほど前から、日本の大きな工業地帯でも、工場や火力発電所、自動車の排出する汚染物質が原因で、酸性雨は降っています。
それでも、ヨーロッパのように、森林が枯死したり、湖の魚が死なないのは、日本の雨量が圧倒的に多いからです。大量の雨で、酸性物質が押し流されてしまうのです。
しかし、かつては、酸性雨の降る地域は限られていました。しかし最近は、日本全体に広がりつつあります。
すでに、松枯れの被害は全国的にあらわれており、このまま何の対策もないまま進めば、日本の多くの地域が、足尾の赤茶けた大地のようになる可能性があります。
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