今世紀初頭のプロボクシング世界ヘビー級チャンピオンにジャック・デンプシーという男がいました。
彼はマナッサの殺し屋と異名をとるほどの破壊力の持ち主でした。1926年、彼はジェーン・タニーにタイトルを奪われ、翌年、リターンマッチに挑みました。観客の誰もがデンプシーが、あの破壊力のあるパンチで相手をマットに沈め、KO勝ちするシーンを期待していました。
そういった観客の思いが通じたのか、デンプシーは第7ラウンドでタニーに強打をあびせ、ダウンを奪いました。たしかな手応えに狂喜乱舞するデンプシー。
ところがレフェリーがカウントを数えはじめたのは、ダニーがダウンしてから数秒たってからでした。というのもデンプシーが興奮していたのか、すぐにニュートラル・コーナーにもどらなかったためです。ボクシングには、カウントはニュートラル・コーナーにもどった時点からはじめられるというルールがあります。この数秒の遅れが、タニーに回復時間をあたえる形となってしまいました。
タニーはカウント9で立ちあがったのですが、実際には14秒あまりマットに沈んでいました。すぐにもどればKO勝ちでチャンピオンの座をとりもどしていたものを、その後タニーに盛り返され、勝負はタニーの判定勝ちに終わってしまったのです。ボクシングのようなエキサイティングなスポーツでも、冷静沈着さは不可欠なのです。
ボクサーの皆さん、ダウンを奪っても喜ぶのはまだ早い
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