幸運がつづくと、自分はいつもツイている気がして、強気になりがちなもの。
ローマ郊外に住む30歳の宝石商、エンリコ・ダンドレアさんも、一文なしからひとかどの宝石商にのしあがり、愛人にアパートを買いあたえるほど成功した人で、自分のツキには相当自信がありました。
ある日、彼は、映画『ディア・ハンター』をみてたいへん感激。とくにロシアン・ルーレットのシーンが気にいってしまったのです。
ロシアン・ルーレットは、ご存じのように、回転式拳銃に一発だけ弾丸をこめ、シリンダーを任意に回転させて、銃口を頭にむけて銃の引き金を引く危険な賭け。
『ディア・ハンター』の主人公は、何回やってもこの賭けに勝ってしまうという強運の持ち主でした。
自分の強運に自信のあるダンドレアさんは、すっかりこの主人公に感情移入してしまったらしいのです。
店の従業員相手に、映画の話をしているうち、護身用の拳銃をもちだしてきて、弾丸を一発こめ、映画のシーンを再現。
「おれはこの賭けに絶対勝つ」
といいはなつや、銃口をこめかみに当てて引き金を引きました。
ところが、幸運つづきの彼は、この日にかぎって不運。弾丸は発射され、彼の頭をぶち抜いたのでした。
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