直前まで迫った死に神から逃れられたわけ

危険には慣れっこのニューヨーク市民のド肝をぬいたのが、1993年12月8日に起きた通勤電車内での乱射事件です。
この電車に運悪く乗り合わせたのが、アメリカ生活33年になるという米国ニチメンの副社長・斎藤実さん。
事件は、ちょうど斎藤さんが乗っていた3両目ではじまりました。ふと斎藤さんの頭をかすめたのは、その日が真珠湾攻撃の日だということ。よりによって今日、犯人と目が合ったら日本人の自分はすぐに標的にされてしまうととっさに考えました。
だから、あわてて逃げようとしたときも、後ろだけは振り向くまいと思ったそうです。2両目に逃げたものの、銃声はどんどん近づいてきます。しかし、それ以上は押しくらまんじゅうで逃げようがありません。
犯人は、射撃しながら、3両目を進み、ついに、2両目に足を踏み入れる寸前まで来ました。斎藤さんとの距離は、あとわずかに3メートルというところ。
ところが、犯人はとつじょ、後ずさりをするように引き返していきました。おそらく、人がいっぱいでそれ以上進めないと思ったからか、次の停車駅ではこの車両のドアが開かないのを知っていて、逃げにくいと思ったからではないかと斎藤さんは推測します。
いずれにしても幸運だったわけですが、もうひとつ幸運が重なりました。犯人の弾が切れたのです。この隙をついて乗客たちは犯人を組み伏せ、御用。
幸運にも斎藤さんは流れ弾で足に軽いケガを負っただけ。3メートル手前まで迫った死神の手からかろうじて逃れられたのです。

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