お伽話は、心をなごませる反面、とてつもなく残酷な面も持ちあわせています。
たとえば、『浦島太郎』の話。いじめられていた亀を助けた浦島は、龍宮城で乙姫様の歓待を受けます。ところが、故郷に戻ってみると、すでに700年の歳月がすぎていました。心細さのあまり、乙姫様からもらった玉手箱を開けると、あっという間に太郎は700歳を超えた老爺になってしまいます。残酷といえば、これ以上残酷な話はないのではないでしょうか。
さて、いきなりお爺さんになった太郎は、その後どうしたのでしょうか。現代でいえば、蓄えもなく、身寄りもない浦島は、民生委員にでも相談して、生活保護でも受けるしかなさそうです。
しかし、そこはおとぎ話。浦島太郎の物語が収められている『御伽草子』によると、太郎の後日譚にはこうあります。
それによれば、老爺となった太郎は、やがて鶴と化し、中国の蓬莱山にたどりつきます。そして、しばらくそこで遊び暮らしたあと、日本の丹後の国に戻り、亀と華燭の典を挙げます。その後、夫婦ともに生きものを救う神様になったといいます。
まさに、悠々自適の人生。浦島太郎は突然老人になっても、少しも困らなかったのです。ただ、乙姫様でなく亀とは結婚させられましたが……。
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