北極圏のある無電局から、「人類初の北極点到達成功」のニュースが流れたのは、1909年9月2日でした。到達者は、アメリカ、ニューヨークの医者クックで、彼は前年の1908年4月21日に北極点に到達。ところが、帰路に迷い、北極点脱出に1年以上もかかり、ようやく無電を打つことができたといいます。
4日後の9月6日、今度はニューョークの探検家ベアリが、「1909年4月6日、史上初の北極点到達に成功した」と打電してきました。
この段階では、ベアリはクックの打電を知りませんでした。人類初の北極点到達の栄誉は、ベアリより1年先に北極点に到達したクックのものとなったかにみえました。ところが、先を越されたベアリはこれでひっこまなかったのです。
探検の準備に金も時間も人手もかけた専門の探検家が、なかば素人の一介の医者に負けたとあっては気持ちがいいはずがありません。クックにケチをつけ、北極点到達の証拠はないとまで息まき、ついに北極点到達第1号の栄誉をクックから奪いとってしまったのです。一方のクックは、世間から「いかさま師」扱いされ、ノイローゼ状態になって海外に逃げだしてしまったのだそうです。
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